大使室より(Gaualofa 号の話)

令和7年12月16日
GAUALOFA号
フェアロファニ船長
Samoa Observer 紙 11月23日号
Gaualofa 号の話

先日、サモア航海協会の招きで、この協会が保有し運営管理している船に乗船してきました。その船が写真のGAUALOFA号。その名は直訳すれば、「愛の風」。全長22メートルの双胴型のこの船は風を主な推進力とする「帆船」です。双胴の船体はポリネシアでは伝統的なデザインのようで、これと似た形の小型の手漕ぎのカヌーもサモアではよく見かけます。2009年にニュージーランドの財団が資金を出して建造した船の一つだそうですが、サモア独立50周年を祝い2012年にサモアに寄贈されて今に至っています。形は伝統的ですが、材料にはグラスファイバーなどが使われています。写真左の女性は、フェアロファニFealofani Bruunさん。この船の船長さんです。
 
航海協会の設立目的の一つは、ポリネシアの伝統的な航海術を復興・継承すること。彼らは、星や風、波のパターンを頼りに航海する古代の「Wayfinding(ウェイファインディング)」技術を守り、次世代に伝えようとしています。同様の団体は、他の太平洋島嶼国にもあり、お互いに交流もあるそうです。この船があれば、かつてのポリネシアの航海者たちがしていたように、風を頼りに島から島へと大海を渡る航海することも夢ではありません。
 
他方、実は、船はあっても、遠洋への航海を実現するのは容易なことではありません。船の定員は16名ですが、その操縦には、最低でも6名のクルーが必要。協会ではクルーの育成にも取り組んでいますが、いざ、遠洋航海を企画するとなると、この種の大型のヨットを操縦できる経験豊かなクルーを長期間確保する必要があり、他の仕事も抱えているボランティアのクルーたちには負担も大きくなります。燃料は一切使いませんが、航海中、クルーたちの生活保障や食料、水等は当然必要。そのための資金が必要になります。
 
協会の現在の主な活動は、環境保護の啓発と主に若年層の教育です。国内の各地の村を訪れ、人々に実際に船に乗ってもらい、温暖化や人間活動などでダメージを受ける珊瑚の保護、育成を訴えるなどしているそうです。
 
船のメインテナンスにも想像以上のコストがかかります。数年に一度、船を陸上に引き上げて船底を含めた船体全体をチェックして補修する「ドライドック」も必要。このオープンデイの後、しばらくはこの補修作業にかかる、とのお話でした。