大使室より(「ナファヌアIII」号の話)

令和7年12月23日
「ナファヌアIII」号
「ナファヌアIII」号の話
 
写真のグレーの船体の船。一見して漁船でも商業用の貨物船でもなく、初めてアピア港内でこの船をみたときは、NZかどこかの軍艦が寄港しているのかな、と思ったのを覚えています。
実はこの船、豪州がサモアの海上警察に供与した船で、船名を「ナファヌアIII」号といいます。船の全長は39.5メートル。
 
豪州はサモアだけでなく、大洋州の他の各国にもこれと同型の警備船舶を供与し、これらの島嶼国の海上警備のニーズに応える支援を行っています。時を遡ること1982年。国連海洋法条約が発効し、200カイリの排他的経済水域が国際的なレジームとして確立すると、太平洋の多くの島嶼国も自国の広大な排他的経済水域の資源管理をし、違法な漁業活動等を取り締まるための能力構築に迫られました。要請を受けた豪州は、これに22隻もの警備艇を12カ国に供与し、必要な技術協力を実施することで応じたのです。
 
サモアに供与されたナファヌア号。実はこれが3代目。初代ナファヌア号は今のナファヌアIII号の船体に比べ一回り小さいパシフィック  クラスの船で、サモアには1988年に供与され、2019年に無事その役割を果たして退役しました。その代替として供与されたのがナファヌアII号ですが、供与されてわずか2年後、2021年にサバイイ島付近の海域で座礁してしまいました。修理のため豪の港に曳航されましたが、損傷がひどく修理不能と判断され、廃船に。
 
2023年に再度供与されたのが現在の船。本来業務である海域のパトロールや救難救助に加え、トケラウの救急患者の搬送やアメリカ領サモアからの医療用酸素ボンベの輸送等にも活用されています。
 
ちなみに「ナファヌア」の名は、戦いの神とされる伝説の女性ヒーローに由来します。